練習で使ったデータは必ず保存するようにしましょう。
「プレゼンテーションとは何をすることか?」と聞かれたら、あなたはどのように答えますか。 スライドを作って話すこと、そのように思われがちですが、実際には明確な目的を達成するための手段であり、段階的な準備が必要となります。
図1.1. に示したように、プレゼンテーションには、アイディアを論理的に構成・表現するという内容の論理性と、アイディアを適切な形で聞き手に届けるという発表の表現力が含まれます。 ここでは、どちらか一方に偏って学習するのではなく、両方の観点からよいプレゼンテーションができるようになることを目指していきたいと思います。
冒頭の質問に戻りますが、プレゼンテーションのわかりやすい定義としては、以下のようなものがあります。
情報やアイディアを他者に伝えて理解してもらい、さらに、それを受け入れてもらうこと。説得を目的とした営み。
つまり、調べたことや自分の意見を話すだけでは、プレゼンテーションとはいえないということになります。 聞き手がどのように受け止めるのか、そこから何を一緒に考えていけるのかを視野に入れた上で、伝えたい情報やアイディアを整理する必要があります。
大学では近年、プレゼンテーション教育を重視する傾向が強くなっています。 その理由としては、社会で働くための基礎能力のひとつに、自分の意見をわかりやすく伝える力が位置づけられていることが挙げられます。 例えば、研究成果や企画案などの専門的な内容を伝えるためだけでなく、広報活動や説明会のような場で広く一般的な話をする際にも、プレゼンテーションの技術が大切だと認識されはじめています。
大学の授業でプレゼンテーションをすることになったら、あなたはどのような順番で、何枚くらいのスライドを作成しようと思いますか。 経験がなく、どうしてよいかわからないときは、以下に示す基本的な構成を参考にしてみましょう。
①表紙には、プレゼンテーションのタイトル、発表者の学修番号と氏名、発表日などを記載します。 必要に応じて、発表の場所(教室)や内容に関連する画像などを入れてもよいでしょう。
②アウトラインとは、プレゼンテーションの概要を表します。 どのような順番で何について話すのか、全体の流れがわかるようなスライドを1枚用意すると、話の展開が見えやすくなり、聞き手の理解が進みます。
③テーマの紹介では、中心となる話題(トピック)をわかりやすくスライドにまとめてみましょう。 「~について、あなたはどう思うか?」や「なぜ、~は重要なのか?」のように、「問い」の形でテーマを紹介すると、聞き手の興味や関心を引き付けやすくなります。
④主張(考え・意見)と⑤主張を支える根拠は、場合によって順番を入れ替えたり、③ → ④ → ③のように繰り返してもかまいません。 先にあなたが伝えたいことを述べて、後からそれを裏付ける情報を出すのか、それとも客観的なデータをいくつか示した上で、あなたの考えを結論としてまとめるのか、より説得的だと思う順番を探してみましょう。
プレゼンテーションで重要となるのは、内容を整理し、全体の構成を考えることです。 調べた情報をそのまま列挙するのではなく、明らかになった事実とそれに対する意見を「根拠」としてまとめ、根拠に基づいて自分の「主張」を展開する必要があります。
例えば、5分程度のプレゼンテーションの場合、①から④までに各1枚、⑤については2枚程度のスライドを作成してみましょう。 一般的に、1枚のスライドを1分程度で話すイメージを持っておくと、内容を詰め込み過ぎなくてよい、と言われています。 もう少し長いプレゼンテーションであれば、③から⑤に数枚ずつ割り当てることになります。
プレゼンテーションを成功させるためには、段階的な準備が必要です。 ここでは、「内容と構成を考える」「スライドを作成する」「発表練習をする」の大きく3段階に分けて、説明をしたいと思います。
はじめに、プレゼンテーションに与えられた時間を確認し、全体の構成を紙にざっと書き出してみることをおすすめします。 何枚程度のスライドに内容をまとめるのか、どのような流れで話すとわかりやすいのかなど、聞き手のことを想像しながら、プレゼンテーションのイメージを膨らませてみましょう。
具体的には、授業で与えられた課題を確認して、大きなテーマを絞り込みます。 中心となる話題(トピック)や、自分が伝えたい主張がある程度決まったら、関連する文献を検索・収集し、そこに書かれている情報をもとに、根拠についてまとめていきます。
ここでの根拠には、実験や調査、テストなどで客観的に真偽を判断できる「事実(データ)」と、発表者の推論や判断を含み、真偽を決めることはできないが妥当性を問われる「意見(解釈)」が含まれます。どちらか一方の羅列になったり、両者が混在したりしないよう、注意深く考える必要があるでしょう。
最も知られているプレゼンテーションソフトは、Microsoftが提供している「PowerPoint(パワーポイント)」で、日本では「パワポ」の愛称で親しまれています。 PowerPointを使うと、文字や画像、グラフや表などが入った、わかりやすく見栄えのよいスライドを作成できます。
現時点の最新バージョンは、PowerPoint2019です。 実際の操作方法については、「4. Microsoft PowerPoint 2019の概要」に説明が記載されています。
スライドの作成が終わり、準備は終わったと安心してはいけません。 本番を迎えるまでに、繰り返し発表練習をすることが重要です。 なぜなら、頭の中で考えた構成の通りスムーズに話すということは、思っているよりも難しいことだからです。
詳しくは「6. 口頭・身体表現」に記載されていますが、プレゼンテーションでは基本的に、聞き手の方を見ながら、ゆっくり、はっきりと話す必要があります。 つまり、スライドをその場で読み上げるのではなく、聞き手とコミュニケーションをとるつもりで発表しなければなりません。 ときには、その場の雰囲気を感じながら、アドリブも交えて臨機応変に対応することも求められます。
そのためには、各スライドで何を伝えたいのかを言語化し、話す内容を頭に入れておくとよいでしょう。 そして、何度も練習をすることで、緊張せずにわかりやすく発表できる度胸と技術が身に付いていきます。
PowerPoint操作でできることを知りたい、操作方法についてわからないことがある、といった場合は、以下のウェブサイトを参照しましょう。
Microsoft PowerPointのヘルプとトレーニング
PowerPoint を起動すると、スタート画面が表示されます。
ここで、新規にプレゼンテーションを作成するか、あるいは既存のプレゼンテーションファイルを開くかを選びます。
新規に作成する場合は、右側のサムネイルから利用したいテーマを選ぶことで、そのテーマを適用したファイルが新規作成されます。
また既存ファイルの場合は、Windows エクスプローラーで目的のファイルのあるフォルダに移動し、そのアイコンをダブルクリックで開くこともできます。
全てのアプリケーションに共通することですが、様々なトラブルにより制作途中のデータが失われてしまうことがあります。 それを防ぐためにも、作業中はこまめに保存するように心がけましょう。
あるいは、クイックアクセスツールバーの をクリックします。
開いているファイルを閉じるだけで、PowerPoint は終了しません。
ウィンドウ右上の閉じるボタンをクリックします。
メインの領域に表示される白い紙のような部分が、1枚のスライドを表しています。 ここに文字や図表を配置していきます。
左の領域には、プレゼンテーションファイル内のスライドがサムネイル表示されます。 新規作成した状態では、1ページ目のタイトル用スライドが表示されています。 スライドを複数まとめたものが一つのプレゼンテーションファイルとなります。
画面上部のリボンには、プレゼンテーション作成のための処理を割り当てたボタンが、機能ごとにパネルに分類され、配置されています。
リボン上部のタブ状になった[ホーム]、[挿入]、[デザイン]、[画面切り替え]、[アニメーション]、[スライドショー]、[校閲]、[表示] をクリックすることによって、各機能のパネルに切り替えることができます。もしくは、リボンにカーソルを合わせてマウスホイールを回すと、切り替えることができます。
新しいスライドの追加や文字装飾、図形描画などの処理がまとめられています。
表や画像、図、メディアクリップなどを挿入します。
背景や文字色などをセットにした "テーマ" や、配色パターンのセットである "バリエーション" を使い、デザインを変更します。
あるスライドから次のスライドに移動するときに、アニメーション効果をつけることができます。
スライド内の要素に対してアニメーションの効果を設定したり、順序・タイミングを調整します。
スライドショー表示をコントロールします。リハーサルやナレーションの録音なども行えます。
スペルチェックや翻訳、コメントの挿入などできあがったプレゼンテーションファイルに対する校正のメニューです。
PowerPoint の画面での表示方法を設定します。
パネルの右下に ボタンが表示されている場合は、より詳しく各項目を設定することができます。
また、それぞれのボタンにカーソルをポイントすると、その機能の説明を見ることができます。
スライドを作成する際は、聞き手に配慮したデザインになるよう、工夫することが重要です。
小さい文字でぎっしりと埋め尽くされたスライドは、発表者が何を伝えたいのかがわかりづらく、内容を読んで理解するまでにかなりの時間がかかってしまいます。 また、さまざまなフォント(書体)や色、文字や画像が動くアニメーションを多用したスライドは、聞き手の注意を引くよりもむしろ、疲れさせたり退屈させたりしてしまうかもしれません。
プレゼンテーションの初心者が気をつけるべきポイントは、「わかりやすさ」「読みやすさ」「インパクト」の3点にまとめられます。
「3. プレゼンテーションの準備」で説明した通り、繰り返し発表練習をすることが重要です。 「話し方」と「姿勢」のそれぞれについて、心がけるとよいポイントをまとめましたので、参考にしてみてください。